ペルー・ワスカラン山における遭難救助 への対応について

Update 2025/6/28 22:10 最終報

 

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 日本時間 6/28 21:25ころ稲田千秋の遺体は救助隊によって麓に降ろされました。

これにより2名の登山者は下山完了となったことで今後はそれぞれの帰国手続きと移行するため、下山完了報告をもって当団体の遭難対策本部は役割を終了します。

 

 遭難覚知後より在ペルー日本国大使館をはじめ、ペルーの山岳救助チームのみなさん、現地在住の日本人ガイドの方まであらゆる機関のみなさまに迅速かつ多大なご協力をいただきました。結果今回の条件において最善な救助であったと思っています。何日にも渡り昼夜問わず奔走していただいた全ての皆さまに遭難者家族に代わり御礼申し上げます。

 

 今回は稲田、寺田の私的な冒険の旅でありましたが、1年前には現地を下見し、豊富なクライミング経験や技術をもって計画やトレーニングをし、用意周到な準備の上で挑んだと聞いています。しかし、自然の前においては時に誰しもが無力である。改めてそんな普遍的な事実を突きつけられた思いでいます。

一方、それでも過酷な登山に挑むクライマーたちの行動は、「人はなぜ生きるのか」という問いに近い哲学的なものさえ感じます。

 

今回のミッションにお力添えいただいた全てのみなさまに感謝いたします。ありがとうございました。

 

 

チッペへ

あなたの「より良い山岳医療の世界」という目標に向けた飽くなき探究心や行動力、情熱はバトンを受け継いだ私たちがきっと実現していきます。

そしてあなたのクライミングスピリッツに心から敬意を表します。いまはゆっくり休んでくださいね。おやすみ。

 

遭難対策本部長

WMA Japan 代表理事

横堀勇

 

南米ペルー、ワスカラン山(6768m)にて、当団体所属医療アドバイザー稲田千秋(40)とクライミングパートナーの寺田紗規(35)が遭難しました。

現在、現地当局や関係者の協力を得て救助活動が進んでいます。

多くの方にご心配、ご迷惑をおかけしておりますが、以下ここまでの対応の記録です。
※以下全て日本時間

2025年6月24日
15:30ごろ

 稲田千秋が体調不良(低体温症の疑い)により行動不能となる。GarminのSOS衛星通信機能を通じてペル―現地の民間レスキュー機関に通報が入る。(遭難時間はそれから4時間ほど前の模様。現地時間23日21:30ころ)
 民間レスキュー機関からWMAJへ連絡が入り、事実関係の確認作業を行なう。


18;00ごろ

 対策本部を設置し、各方面への交渉に入る。

 ・現地民間のレスキュー機関への救助要請
 ・現地警察機関への救助要請
 ・在ペルー大使館を通じた支援要請

 

21:30ごろ

 日本・ペルーの関係者によるオンラインミーティング
 ・稲田と寺田の生存を確認
※0:00ころまでテキストによる日本とのやり取りは可能。登山者は遭難地点にて待機中。行動不能の模様

 ・救助体制の確認

※遭難地点は山頂直下約6,600m付近。この標高まで飛行できるヘリコプターがペルーにはないため、救助隊はヘリにてワスカラン避難小屋へ飛び、その後徒歩にて現場へ。救助は陸路にてふたりをワスカラン避難小屋まで下ろし、その後はヘリレスキューを予定

 ・在ペルー日本大使館の計らいにより現地警察の協力を得る

 

 

2025年6月25日

6:00ごろ

 ・現地警察と民間合同のレスキュー開始。隊員9名が入り3便に分かれてワスカラン避難小屋に入った

 ・ワスカラン避難小屋に到着後、徒歩によるアプローチを開始

 ・この間、在ペルー日本大使館および現地関係者の働きかけによりさらに複数チームが派遣される
 ・救助隊は、現地の山岳ガイドを中心とした⒑余名。数班に分かれて行動

 

21:30ごろ

 ・山麓にある宿泊所のスタッフから稲田、寺田と電話で交信できたと報告あり
 ・反応がスムーズでない点もあったが、ふたりの声が聞けたことを確認

 

2025年6月26日

2:00ごろ

 ・SOSにより確定されたポイント周辺まで接近するも、周辺には大きなクレバスがありアクセスが困難。ルートを探してアプローチを続行

 

5:00ごろ

 ・救助隊が遭難者2名にアクセス。寺田は意識あり、稲田は意識なしの重体と報告あり

 ・救助隊は夜通し活動。ふたりに応急処置をしながら搬送方法を検討

 

8:00ごろ

 ・現地の天候が悪化傾向にありレスキュー活動が困難を極め、2名の同時搬送が不可能となった

 ・現地レスキュー隊および関係機関により、現場にて稲田千秋の死亡判断を行なった

 ・これ以上のレスキュー活動は安全が確保できなくなったため、位置をGPSで記録し、稲田を現地に一時的に安置

 ・現在は寺田紗規の救助搬送に向けてレスキュー隊は全力で行動中

 

23:00ごろ

 ・寺田紗規は現在標高5,100m付近を歩行中(ピックアップポイントは標高約4,500m)

 ・搬送に必要なヘリコプターが既に手配され、現地の医師と共に搬送待機している

 ・ピックアップポイントに到着後、ヘリコプターにおいて麓の病院に搬送する予定。

 

2025年6月27日

 

3:45ごろ 

 ・寺田紗規は無事にヘリコプターのピックアップポイントにある避難小屋に到着

 ・途中からは自力歩行が困難になり救助隊により搬送となったが意識は清明

 ・最終的な着陸地点などを調整中、天候と飛行許可の条件が整い次第ヘリコプター出動

 

4:30ころ

 ・寺田紗規は救助隊の迅速な連携により、無事に麓の病院に収容
  (落ち着いた治療を実施するため、病院名等は非公表とさせていただきます)

 ・現在、稲田千秋の遺体収容にむけて現地で調整開始

 

12:00ころ

 ・山中に一時安置された稲田千秋の遺体の搬出に向けて、地元山岳警察やガイドで構成されたチームが出発

 

23:00ころ

 ・山中に一時安置されていた稲田千秋の遺体に再度接触、体制を整え次第ヘリコプターのピックアップポイントへ向けて下山を開始予定。

 

 

     2025年6月28日

 

10:20

 ・稲田千秋の遺体が現地救助隊の手によってヘリコプターピックアップポイントの山小屋に到着。このあと天候や隊員のコンディションを整えて次第ヘリコプターにて麓に搬送予定

 

21:25ころ

 ・稲田千秋の遺体は現地救助隊の手によって麓に搬送され下山が完了。以上をもって遭難者2名の下山が完了した。

 ・遭難対策本部の活動を終了、今後は各メンバーの個別のサポートを続ける。

 

 

 

遭難地点

ワスカラン山山頂直下約6,600m付近。

 

遭難者 2名(当団体所属稲田千秋およびパートナー寺田紗規)

 

遭難対策本部

一般社団法人ウィルダネスメディカルアソシエイツジャパン

 

 

 

※お問い合わせへの対応は報道関係機関に限らせていただきます。

お問合せ内容は、下記「専用問い合わせフォーム」より送信してください。

 

また、現在、対策本部としての活動を遅滞なく継続させるため、電話での問い合わせには対応しておりません。

ご理解くださいますよう、お願い申し上げます。

 

なお、ご家族等への直接のご連絡などは、状況をお察しいただきお控えください。

 

対策本部

WMA Japan

 


対策本部 専用お問合せフォーム

お問合せについてのご回答は、フォームに入力してあるメールアドレスへの返信または電話番号への架電にて対応いたします。

ご回答には時間がかかる場合がありますので、あらかじめご承知おきください。

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