横平 充雅(Mitsumasa Yokohira)


航空自衛隊 航空救難団 救難員

WMA野外災害救急員WFRプロフェッショナルレベル 

 僕がアウトドアの世界に惹かれたのは、東日本大震災(平成23年/2011年)がきっかけでした。

 

 当時、宮城県東松島市に住んでおり、自身も被災してライフラインが断たれた中、救助活動に明け暮れる日々は、極限状態の連続でした。心も体もすり減っていたある日、心を整えるために登った蔵王山。その静けさと雄大な景色に、ふと肩の力が抜け、「生きてるな」と感じられたんです。あの時、自然は「癒し」として僕の中に入ってきました。

それ以来、登山を中心にアウトドア活動の幅を広げてきました。北海道にいた頃はアイスクライミングにどっぷりとハマり、待機のないオフのたびに山へ通い詰めていました。

 

 2019年にはヨーロッパアルプスの名峰・モンブランに登頂。自然の持つ厳しさや美しさ、人間の挑戦心の尊さにあらためて惹かれました。もっと多くの人にアウトドアの魅力を伝えたいという想いから、北海道アウトドアガイド(山岳)の資格も取得しました。

 こうした経験を通じて、自然と向き合う中で求められる「安全」や「リスクマネジメント」の重要性を強く意識するようになりました。自然は癒しや恵みを与えてくれる一方で、突然その姿を変え、命を脅かす脅威となることもあります。2015年(平成27年)9月の関東・東北豪雨などの災害現場では、まさに wilderness 下での救助活動が続きました。限られた資源と時間の中で、何ができるかを判断し、行動する力。その大切さを、現場で何度も痛感してきました。

 

 その考え方に深く共感したのが、WMAのプログラムです。WAFAやWFRを通じて学んだ「制限のある環境で、できることを最大限に行う」という姿勢は、まさに現場で求められる考え方そのものでした。

 僕は医療資格を持っていませんが、「医療従事者でなくても、知っていることで救える場面がある」と強く感じています。

「備えあれば憂いなし」とはよく言いますが、アウトドアにおいてそれは「命を守る力」にもなります。WMAのプログラムは、その力を自分自身の中に育てる、とても実践的な道具箱だと思っています。

 

「想定していない、その“まさか!”の瞬間。あなたにできることを。」

WMAJアドバイザーとして、皆さんが安心してフィールドに立てるよう、少しでも力になれたら嬉しいです。