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航空乗務員×野外災害救急法の価値

 どんなところでも人を助ける救急法のことを、日本語では野外災害救急法といいます。「どんなところ」として想定されるのは、救急車や病院までのアクセスに時間を要する状況や場所のことを指します。

 

 元々北米で開発されたこのファーストエイドが日本に入ってきたのが2007年。当時よく言われたのは「あぁ、これは山の人のやつね」ということです。確かに山の人には最適です。

 しかし、意外かもしれませんが、私たちの立場からすると今日のテーマでもある「航空乗務員」の世界と「山の世界」は同じだったりするわけです。

 

飛行機の中 ≒ アルプス山脈 !?

 

 例えば飛行機の中で深刻なケガはまぁそう多くないとして、具合が悪くなった場合を想像してください。その時頼りになるのはきっと客室乗務員さん(CA)ですよね。手に負えそうもない場合は、医療従事者の応援を要請する、通称ドクターコールを用いてみんなで救護活動にあたるわけですが、適当な人材が見つからない場合は、やむを得ず自分たちでどうにかしなければなりません。

 仮に機長の判断で緊急着陸をしたとしても場所にもよるでしょうが、数分で着陸!というのは現実的にに考えて相当厳しいのではないかと思います。そうなるとどうでしょう。このシチュエーション、山の中でケガや病気になるのと同じような状況ではないでしょうか??

 

 

傷病者の緊急度を判断する「評価システム」 

 

山で用いられる野外災害救急法は次のようなステップで緊急度の判断を用いています。

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①傷病者が数分で命を落とす可能性があるか、どうかの判断

 →問題があればすぐに処置(救命処置)

②徹底的な情報収集術

③カリキュラムで学んだ、「人体の基礎的な知識」に②で得られた情報を組み合わせて、「一見大丈夫そうだが、実は大丈夫じゃない」人の早期発見。

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 この③「一見大丈夫そうだが、実は大丈夫じゃない」がミソです。お客さまが「大丈夫、大丈夫」というかもしれないが、実は体の中はもはや限界…。実はこんなこともありえますが、お客さまの言葉を信じ切って「あ。そうですか」と様子を見ていたのちに悪化したとしてもそこは航空機の中。そこから急いで着陸態勢をとっても場合によっては間に合わないかもしれません。

 野外災害救急法の得意分野は、早期に「大丈夫じゃない」人を発見し、医学的に合理的で根拠のある判断をすることができます。そうすることで、お客さまや関係者にも自信をもって説明をすることができますし、ひいては危機的な状況に先手を打った対応が可能になる、というわけです。

 航空各社のCAさんは、定期的に救急法トレーニングを受けているとは聞いていますが、ほとんどの会社で採用されているのはいわゆる「都市型救急法」(=救急車到着まで数分でくるシステムを前提にしたプログラム)のようです。

 もちろん、最低限のスキルとしては適切な学びをされていらっしゃるわけですが、この記事にたどり着いて読んでいただた航空会社の研修担当のみなさま、今度の航空乗務員研修では試しに一見異分野に思える「野外災害救急法」を研修テーマに添えてみませんか?

 やってみると、きっとこれまで以上に航空乗務員のみなさんの安心・安全・顧客ケアの自信につながることは間違いなく言えそうです。さらに言えば、WMAカリキュラムは世界31か国で運用されていますので、国際線対応にもバッチリですね。

 

 

 詳しいカリキュラムや内容はぜひお問い合わせください。

さらなる飛行機の安心安全のために。今日は航空業界と野外災害救急法のコラボレーションについて解説してみました。